山階鳥類研究所の事業
今日、環境問題が人類の大きな課題になっています。
人類が繁栄を続けるための大前提として、
生物多様性を守ることの重要性がしだいに理解されるようになってきました。
なかでも鳥類は、美しい色彩と鳴き声が多くの人の目、耳につきやすいこともあり、
環境の指標としての価値が高く、その保護活動が生態系全体の、そして
地球環境の保全につながることが期待されています。
当研究所は、日本で最大の鳥類に関する専門研究機関で、
前身の山階家鳥類標本館の設立(1932年)以来八十余年、一貫して日本の鳥類学研究を支えてきました。
その業績は、世界的に高く評価されています。
今後も地道な基礎データの収集に立脚しながら、希少種の保全に挑み、
「翼に託す地球の未来」を合い言葉に、
鳥類にも人間にも棲みやすい地球環境の維持に貢献していきます。
○ 希少鳥類の保護や回復などの研究活動 | ||||
希少鳥類の保護に役立つ研究や、海鳥の繁殖生態などの研究を行っています。 | ||||
アホウドリの回復に向けての取り組み | ||||
☆ 歴史と現状 | ||||
アホウドリは、かつては北太平洋の島々で広く繁殖していたと推測されていますが、明治時代以降、羽毛採取を目的とした乱獲によって、しだいに分布を狭め、一時は絶滅したと考えられました。 1950年代に入り、伊豆諸島の鳥島で少数の生息が確認された後、保護活動によって徐々に個体数を増やし、概ね 4000羽程度にまで回復しました。 |
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☆ 第三の繁殖地を小笠原に | ||||
鳥島は火山島で、いつ大噴火が起きても不思議ではありません。そこで、鳥島、尖閣諸島に次ぐ第三の繁殖地を作る計画が専門家の間で協議されてきました。その結果、小笠原諸島の聟島に繁殖地を復元する計画が固まりました。 | ||||
アホウドリ類は、育った場所を記憶しており、数年後に成熟して繁殖地を探すときには、巣立った場所に戻ってくると考えられています。この習性を利用し、鳥島で生まれた雛を聟島で人工飼育し巣立たせることにより、将来この聟島で繁殖するアホウドリを増やそうというのがこの計画です。 当研究所は、米国政府、環境省と共同で、この計画に参加しています。 |
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予備実験を重ねた後2008年、アホウドリのヒナ 10羽が初めて鳥島から聟島に移され無事巣立ちました。その後、2012年5月末までに計 69羽のヒナが巣立ちました。将来、巣立ったヒナとその子孫が聟島で一大繁殖地を形成してくれることを期待しています。 | ||||
2016年5月、小笠原諸島全体でアホウドリ合計2つがいの繁殖が成功しました。2014年5月には媒島でヒナが確認されており、今回の確認で、戦後はアホウドリの繁殖がなかった小笠原諸島での、本事業開始後のアホウドリの繁殖成功は3例となりました。 | ||||
ヤンバルクイナの新種記載から保護に向けての取り組み | ||||
☆ 新種記載 | ||||
ヤンバルクイナは、沖縄島北部に広がる山原(やんばる)の森にだけ生息する飛べない鳥です。 1981年、当研究所が鳥類標識調査中に捕獲に成功し、新種として世界に認められました。分布域が限られているため、当初から絶滅が危惧されていました。1991年、レッドデータブックの絶滅危惧種に指定されています。 |
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☆ 絶滅の危機 | ||||
当研究所では、調査を継続しています。その結果、分布域は約40パーセント縮減し、推定個体数は2001年に約 1220羽に減少したことが判明しました。 減少の原因は、マングースの生息域の拡大、ネコやカラスによる捕食の増加、交通事故などが考えられていて、このままでは、近い将来、絶滅する可能性があります。 |
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☆ 保護へ | ||||
シンポジウムを開催するなど、減少の実態や保護の必要性を社会に発信しています。沖縄県や環境省は、マングース対策として捕獲や分布域拡大防止のフェンスを設けたりしていますが、今後さらなる対策を進める必要があります。 | ||||
その他の研究 | ||||
鳥インフルエンザの感染ルートの解明、鳥類の地理的変異の研究 など | ||||
○ DNAバーコーディング | ||||
鳥類のDNAを解読しその配列をもとに種の判別を容易にできるよう、データベース(BOLD)に登録するための事業を行っています。 | ||||
これは世界的なプロジェクトであり、2010年内に地球上のあらゆる生物種の登録が行われる見込みですが、東アジアの鳥類に関しては、国立科学博物館と当研究所が中心となって進めています。 | ||||
○ 渡り鳥の標識調査 | ||||
全国各地のボランティア調査員の協力を得ながら、野生鳥類に識別用足環を付けて、移動経路や寿命などの生態、長期間にわたる個体数の変動の研究をしています。 現在は、環境省委託事業として、鳥類の保護にも役立てる基礎データを収集するとともに、約 500万件超の標識データを管理し、講習会を開き調査技術の向上など調査員教育を行っています。 |
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また、海外諸国と連携をとりながら、夏鳥の越冬地や冬鳥の繁殖地など地球規模の長距離移動の情報交換、アジア諸国への調査技術指導などを行っています。 | ||||
○ 図書・標本の収集・管理・利用 | ||||
鳥類学の研究に欠かせない図書と標本を収集し、所内で研究のため利用するほか、所外の研究者の利用に供しています。 | ||||
広範囲にわたる文献は約 4万冊、剥製・骨格・巣・卵・液浸などの標本は約 7万点にのぼります。 このうち剥製標本については、ラベル情報をデータベース化し、ウェブサイトで一般公開しており、多くの方がたに利用されています。 (http://www.decochan.net/) |
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現在、鳥類学の新分野を開拓するため、このデータベースに形態、色彩情報を付加する研究を行っています。 また、図書については、現在、所蔵雑誌のデータベースをウェブサイトで公開しており、順次その他の資料についても公開していく予定です。(末尾のウェブサイトをご覧ください。) |
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○ 普及・広報活動 | ||||
山階芳麿賞 | ||||
当研究所の創設者である故山階芳麿博士の功績を讃え、1992(平成4)年に設けられました。 鳥類学の発展と保護活動に寄与した個人・団体を表彰し、記念講演会を開催しています。 |
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出版物の刊行 | ||||
☆ 山階鳥類学雑誌 年 2回 ☆ 山階鳥研NEWS 年 6回 ☆ 「保全鳥類学」 (山階鳥類研究所編、京都大学学術出版会) ☆ 「鳥類学」 (フランク・B・ギル著、山階鳥類研究所翻訳、新樹社) ほか |
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シンポジウムの開催 | ||||
随時開催し、鳥類学の成果および鳥類と自然環境の保護の必要性を普及・啓蒙しています。 | ||||
☆ ご支援のお願い | ||||
賛助会員を募集しています | ||||
個人賛助会費 年1口 1万円 法人賛助会費 年1口 5万円 |
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寄付をお受けしています | ||||
いただいたご寄付は、研究活動のために活用されます。 | ||||
課税上の特別措置 | ||||
当研究所は、特定公益増進法人です。当研究所への寄付金は、課税上の特別措置の対象となります。 |
○ ご連絡、お問い合わせは、下記へどうぞ
公益財団法人 山階鳥類研究所 | ||
〒270−1145 千葉県我孫子市高野台115 TEL:04−7182−1101 FAX:04−7182−1106 |
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寄付のお誘い | http://www.yamashina.or.jp/ |
(170802更新)