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サウンド・テーブル・テニスの活動に携わって 〜視覚障害者のサポート〜


「サウンド・テーブル・テニス」をご存知ですか?
 「サウンド・テーブル・テニス」(略称:STT)とは、視覚障害者用の卓球のことで、ボールを台上で転がし、その音で位置を判断して打ち合う競技です。ボールは直径4センチメートルのプラスティック製、オレンジ色。中に小さな金属球が4個入っていて転がると音が出ます。台の中央に板面から上に4.2センチメートル離してたるまないようにネットを張り、その下をボールをくぐらせて打つので、卓球台は継ぎ目のない一枚板で造られています。卓球台のサイズは一般用と同じですが、サイドの一部とエンドに木製のフレームが取り付けてあり、落球を制限しています。ラケットは打球音がはっきり判るようにラバーを付けないものを使用します。
実際の「STT」の練習風景をご紹介します
 川崎市内では、主に中野島の「多摩川の里」で月に2回ほど練習をしています。参加者は20歳代から70歳代までの老若男女で、毎回1015人位集まります。参加人数は徐々に増加しています。
 まず予約した会議室の椅子や机を後方に寄せ、畳んであった卓球台を移動して降ろし、ネットを張ります。参加者の人数で組み合わせを決め、練習開始です。基本はアイマスクを付けて競技します。最初の対戦者AさんとBさんでじゃんけんをして、サーブまたはレシーブの先取と位置を決めます。主審が「A(B)・トゥ・サーブ」「ラブオール」「プレー」と宣告した後、サーブする人が「いきます」と言い、レシーブする人が「はい」と返事をしてからサーブが打たれます。打ったボールがネットの下を通過して相手の守備コートに達すると、レシーバーが打球します。そのボールが台から飛び出すと「リターンミス」となって、相手の得点になります。相手のボールがエンドフレームの内側に着く前に打ち返さないとミスになりますが、エンドフレームの内側に一度当たったボールがはねて外に出ると、打った人のミスになります。こうして11ポイントを先取したほうがゲームの勝者となり、次のゲームへと続きます。大会などの試合では、1マッチが3または5ゲームで行われますが、普段の練習の時は得点カウントなしの時間制限で行うことも多いです。練習日は日曜または土曜の午前10時から12時までと、13時から休憩をはさんで16時まで練習を続け、練習後は卓球台を畳んで移動し、机と椅子を元の位置に戻して終了です。
STT」との関わり
 私がSTTと関わりを持つようになったのは、たまたま一緒にコーラスをしている視覚障害の友人から、「STTをサポートする人が足りないので来て欲しい」と頼まれて、お手伝いに行ったのがきっかけです。初めはただボール拾いをしていましたが、当時審判をされる方が一人しかいなかったため、これからは数人の審判が必要ということで、新しいボランティアの男性と私とで審判の勉強をすることになりました。ルールブックを読みながら徐々に覚えていくのですが、一瞬のボールの動きを判定するのはとても難しく、なかなか判断できないままに瞬時にコール(宣告)できない場面もありました。もちろん今でも判定に迷うことはしばしばです。
 ただ練習に参加している視覚障害の方々はとても明るく活発で積極的なので、一緒に活動しているとこちらもどんどん元気になり、自分の生活にも張りが持てるようになってきました。現在は、毎月のSTTの練習時と、県内や東京のグループとの交流試合、また川崎市視覚障害者協会主催の大会などで審判を務めていますが、STTとの関わりはもう7年近くになります。STTの活動のお蔭で身体を動かすことが多くなり健康を維持できるので、継続してきて良かったと思っています。
「STT」の試合にはボランティアが必要です   
   STTの試合は、全国大会や関東ブロック大会、藤沢大会や川崎大会など、年に数回行われていて、各大会には各地区の上位者が代表として参加し、地区ごとの熱い戦いがおこなわれます。
 川崎市内の大会は、井田の体育館で卓球台2台での試合となり、主審・副審が各2名以上、そのほかに卓球台とその周囲の設営、競技者の組合せ表の掲示、ボール拾い、見学者席の設営、対戦記録の表示など、多くのボランティアのサポートによって成り立っています。現在は主に、市内の点訳や朗読のグループの方々にお手伝いをお願いしていますが、できればこれからは、STT専属のボランティアを集めることができれば理想です。
 
「STT」の審判で鍛えられること   
   審判は試合中ずっと立っていることが多いため、足腰が鍛えられますし、また得点毎に、ポイントした理由と競技者名、両者の得点とを英語でコールしなければならないため、頭を使い脳が活性化します。さらに上位者の試合ともなると打ち合いのスピードが速く、ボールの動きを追って行くには動体視力を鍛えていないと判定ができません。またボールの当たった音で判定する場面もあるので聴力も鍛えられます。興味がある方は、ぜひ審判に挑戦していただきたいです。  
「STT」の活動をもっと広めるために  
   最近では障害者スポーツが盛んになってきていますが、視覚障害者のスポーツとして、このSTTは最適ではないかと思います。天候に左右されずに室内でできる競技であり、老若男女どなたでも参加でき、怪我の心配もほとんどありません。月に23回の練習では、お互いに競技で競い合うことはもちろん、お仲間との交流や情報交換もできるため、皆さん活き活きとしています。趣味としてのスポーツで健康を維持し楽しむこともできますし、上位者になって各大会の優勝を目指すこともできます。またSTTは、誰でも簡単に出来るスポーツである反面、かなり奥が深く、上級者になるには何年も練習を積む必要がある競技だとも感じています。
 東京都では谷保に「多摩障害者スポーツセンター」が、横浜市では新横浜に「横浜ラポール」があり、常時STTの卓球台が設置されていて自由にかつ無料で使用できる施設があります。川崎市にはそのような施設がなく、遠方まで出掛けて自主練習をしている状況ですので、川崎市内にも障害者専用のスポーツ施設があると良いなと常々思っています。
 
     
   このSTTの活動をもっと多くの視覚障害者や一般の方々に知っていただくことと、STTの活動をサポートするボランティアの方々が一人でも増えることを心から願っております。   
2019.8.25  川崎市宮前区 
  浅野 裕子(あさの ひろこ)

(190902掲載)

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